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彼女がよく泣くようになった理由と、しんどい彼氏の処方箋

イベントの二次会。店のいちばん奥の席で、彼はレモンサワーの氷が全部溶けるまでひとことも喋らなかった。 グラスから垂れた水滴が、コースターをぐしゃぐしゃにふやかしていく。 やっと出てきた第一声が、これ。

「彼女、最近やたら泣くんですよ。聞いても理由、言わないんです」

28歳、法人営業。交際一年半。 サークルを運営していると、この手の相談が季節を問わず届く。相談してくる男性にはひとつ共通点があってね。泣かれた直後に来るんじゃないの。数ヶ月ぶんため込んで、限界の三歩手前になってようやく口を開くんだよね。

目次

涙は攻撃じゃない。言葉になりそこねた要求です

泣かれた側がいちばん苦しいのは、理由がわからないこと。 彼女が黙って泣くとき、彼女自身も理由をつかめていないことが多い。

感情に名前をつけると、脳の警報装置にあたる部分の反応が落ち着く。これは脳画像を使った研究で何度も確認されている話で、逆に言えば名前をつけそこねた感情は行き場を失って身体から漏れ出す。その出口が涙。

だから泣いている彼女の中身は、こんな感じで渋滞している。 安心させてほしい。でも要求したら重い女だと思われる。言えない。苦しい。ぽろっ。

彼女は責めていない。訴えかたを持っていないだけ。

彼女がよく泣くようになった6つの理由

ホルモンの波にのまれている

生理前の一週間だけ情緒が沈む人はかなり多い。日常生活に支障が出るレベルのものは月経前不快気分障害として診断名がついていて、精神科の診断基準にも載っている。 見分けかたは単純で、カレンダー。泣いた日に印をつけて二、三ヶ月ながめると、山と谷がきれいに揃うことがある。

泣いている原因が、あなたと関係ないところにある

職場、家族、友人の輪。 人は安全だと感じている場所でしか緩まない。会社で耐えきった涙が、彼氏の前でだけ落ちる。つまり泣かれているのは信頼された結果なんだよね。ここ、地味だけどでかい。

見捨てられ不安のスイッチが入りっぱなし

愛着のスタイルには傾向があって、不安が強いタイプの人は返信の遅れや言葉の温度差を、関係の終わりの前触れとして拾ってしまう。 本人にとっては大げさな心配じゃなくて、ほんとうに足元が抜けるような感覚。ドクドクいってる心臓を抱えたまま既読を見つめている、あの状態。

言えなかった不満が、涙の形で出てきている

現場で見ている限り、これがいちばん多い。

以前のイベントで知り合った30歳の女性が、こぼしていた話。 彼氏はやさしくて、記念日も忘れなくて、文句のつけようがない。ただ、彼女が仕事の愚痴を言うたびに、じゃあ転職すれば、と解決策を返してくるらしくて。 半年たったころ、なんでもない夜に涙が止まらなくなったんだって。

「私が欲しかったの、答えじゃなかったんですよね」

不満を三十回のみこむと、三十一回目は言葉じゃなく水になって出る。

環境が変わった

同棲を始めた、転職した、引っ越した、遠距離になった。 生活の土台が動いた直後は、誰でも情緒が薄くなる。三ヶ月前と今を比べてみて、彼女の生活に動いたものがないか思い出してみて。

心の不調が顔を出している

涙もろさが二週間以上つづく。眠れない、あるいは寝すぎる。食欲が消える。朝起きた瞬間がいちばんつらい。好きだったものに手が伸びない。 このあたりが重なっているなら、恋愛の問題として扱うのをいったんやめたほうがいい。

原因を切り分ける、3つの質問

理由を並べられても、自分のケースがどれかわからないと意味がないよね。 判別に使えるのはこの三つ。

泣く日に周期性はあるか。あるならホルモンの線が濃い。 二人でいるとき以外も泣いているか。ひとりの部屋でも泣いているなら、原因はあなたの外にある。 泣きやんだあと、彼女は何を求めているか。抱きしめられて落ち着くなら不安のケア。話を聞いてもらって落ち着くなら不満の蓄積。何をされても戻らないなら、心身の不調をまず疑う。

この三つを頭に置くだけで、対応の精度が変わる。

泣かれる側だって、確実に削れている

ここからが本題。

去年のイベント参加者で、34歳の男性がいた。 彼女が泣くようになって半年、彼は玄関のドアを開ける前に必ず一呼吸置く癖がついたと言っていた。今日の機嫌はどっちだ、と身構えるために。

「地雷探知機になった気分ですよ」

そう言って笑ったけど、目のふちが動いていなかった。

泣かれる側に起きているのは、三種類の消耗。 ひとつは、常に地雷を探しつづける緊張。ふたつめは、感情を受け止めるばかりで自分の感情を渡す先がない一方通行。三つめがいちばん厄介で、支える側は弱音を吐いちゃいけないという思い込み。

全部受け止めるほど、沼は深くなる

彼女を泣きやませるのは、あなたの仕事じゃない。

泣くたびに全力で慰め、予定を変え、朝まで電話につきあう。それを繰り返すと、二人のあいだに役割が固定される。泣く人と、泣きやませる人。 そうなると彼女は感情を自分で処理する練習の機会を失うし、あなたは支配権を握られる。愛情の形をした共依存が完成するまで、たいてい一年かからない。

やることは逆。 そばにいるけど、責任は引き受けない。今は聞けないと言う権利を自分に返す。そして必要なら、カウンセラーという第三者を二人の関係に招き入れる。

冷たいんじゃない。長く一緒にいるためだよ。

そのまま使える、泣いてるときの声かけ

原則がひとつある。解決しようとしないこと。理由を尋問しないこと。 かわりに、彼女が言えていない状態に名前をつけてあげる。

理由がわからず泣かれたとき。 「今日はうまく喋れない日ってことでいいよ。ここにいるから」

自分が原因で泣かせたとき。 「ごめんを先に言うね。言い訳はそのあとにする」

電話やLINEで泣かれたとき。 「文字だと足りないから、声だけ聞かせて。二分でいい」

深夜に泣かれて、自分にも余力がないとき。 「今日は全部は受け止めきれない。でも明日の朝いちばんに電話する。約束する」

これ、逃げに見えて逃げてない。できない量を約束しないほうが、信頼は積み上がるから。

言わないほうがいいのは、なんで泣いてるの、泣かないで、落ち着いて、の三つ。 理由を聞かれても答えられないし、泣くなと言われれば涙を止められない自分を責めるループに入るだけ。

効くのは、泣きやんだ次の日の一言

現場で見ていて、いちばん関係が安定していたカップルがやっていたこと。 それは泣いている最中の対応じゃなくて、翌日の一言だった。

「昨日のあれ、ちゃんと覚えてるよ。無理に話さなくていいけど、忘れてないから」

これを言われた女性が、次のイベントで話してくれた。 自分の涙がなかったことにされなかった、それだけで胸のざわつきが消えたって。

泣いた翌朝は、多くの人が恥ずかしさで縮こまっている。そこに触れてもらえるかどうかで、次に泣く回数がじわじわ減っていくんだよね。

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