明後日、初めて会うんです。個室のお店、予約してもらっちゃって。
うちのイベントの打ち上げで、25歳の子がそう言った。アプリで知り合った相手らしい。話しながら、彼女はグラスの水滴を指で拭き続けてた。
アプリの初対面はデートじゃない。面談です
相手はまだ、写真と文章でできた人物。実在するかどうかも、正直あやしい(笑)。その状態でディナーのフルコースを組むのって、内見もしていない部屋に手付金を払うようなものでしょ。
イベントで面白い傾向がある。会場で3時間しゃべり倒したペアより、90分で切り上げて帰ったペアのほうが、あとで会っている率が高い。
心理学に、途中で終わった作業のほうが記憶に残るという話がある。ツァイガルニク効果と呼ばれるもの。ドラマがいいところでCMに入ると続きが気になる、あれです。恋愛でも同じことが起きてる。話し切らずに帰った人のほうが、相手の頭に居座るの。
好意の積み上がり方にも法則があって、接触の長さより回数のほうが効く。単純接触効果です。3時間を1回より、1時間を3回。身も蓋もない話だけど、現場で見ている感覚とぴたりと重なる。
初回は1時間。カフェ。それで足ります。
夜と酒と個室。この三点セットを出してくる人は、切っていい
炎上覚悟で言い切ります。初回にこの組み合わせを提案してきた時点で、候補から外していい。
アルコールには、目の前の刺激への反応を強めて、その先のリスクを見えにくくする働きがある。初対面の女性の判断センサーを鈍らせる環境を、彼はわざわざ選んでるってこと。気づいていないなら鈍い。気づいているなら、もっと怖い。
個室は密室です。店員さんの目が届かない。壁一枚の向こうに、助けてくれる人はいない。
夜は終電が縛りになる。もう一軒だけ、あと30分だけ。そういう言葉に押し切られる構造が、最初からできあがってる。
考えすぎだよ、いい人だっているのに。そう言われるのも分かってます。いますよ、いい人。ただね、いい人ほど初回に個室を取らないの。女性が緊張していることを、想像できてるから。想像できる人は、明るくて人の目がある場所を、こちらが何も言わなくても選びます。
店選びは、相手の想像力のテスト。
背中がゾワッとする場所を、女性はもう知っている
会員の女性たちから出てくる警戒リストは、笑えるくらい一致してる。
一番は車。迎えに行きますよ、送りますよ。優しさの皮をかぶっているけど、移動の主導権を丸ごと明け渡す行為なんですよ、あれ。降りたい場所で降りられない。信号で止まった瞬間にドアを開けて降りた子の話、うちには実際にあります。
カラオケも同じ。個室、暗い、防音。初回に出してくる時点で、何を想定しているかが漏れてる。
相手の最寄り駅を指定されるのも、じわじわ危ない。地元の店。土地勘がないのはこちらだけ。逃げ道の地図を、相手だけが持っている状態です。
夜の公園、河川敷、家が近いので寄っていきませんか。ここまで来たら論外!
高い店をおごられるのが怖い、という感覚は正しい
35歳の男性会員が、ずっと2回目に進めずにいた。毎回、雰囲気のいい店を予約して、料理も酒も選んで、支払いも全部。それでも次がない。
女性側に理由を聞いて回ったら、出てきた言葉がこう。
店がすごすぎて緊張した。値踏みされている気がした。お金をかけさせてしまって、断りづらくなるのが怖かった。
最後のやつ、刺さります。人には、受け取ったら返さなきゃという心理が働く。返報性の原理と呼ばれているもの。初対面で1万円のディナーをおごられた女性の中には、その瞬間、見えない借金が生まれてる。断りづらさという名前の借金。
初回は、割り勘できる金額にしておく。カフェなら千円ちょっと。ここで貸し借りをつくらないことが、あとで自分を守ってくれます。
ちなみにその35歳、店のグレードは一切変えなかった。変えたのは、誘うときに解散時間を先に言うことだけ。19時から1時間くらいでどうですか、と。それで2回目が続くようになったの。ほんとに、それだけで。
安心できる場所の条件は、たった一言に縮む
明るい。人の目がある。駅から近い。酒がメインじゃない。条件は色々挙げられるけど、ぜんぶ一つに集約できます。
自分の意思で、いつでも帰れるか。
これだけ。平日の19時から1時間、駅直結のカフェ。土日なら15時。地味?地味でいいんですよ。地味な場所を選べる人が、いちばん安心して向かい合える人だったりする。
場所は女性から提案していい。しないほうが損してる
28歳の会員が前に言ってた。相手が決めてくれるほうが楽だと思ってた、って。
気づいたら、3回続けて相手の最寄りの居酒屋に呼び出されてた。片道1時間。帰りは終電ぎりぎり(泣)。改札まで走って、心臓がドクドク鳴ったまま電車に飛び乗る。それを毎回やってたわけ。
次の人のとき、初めて自分から送ってみたらしい。◯◯駅のカフェで、19時から1時間だけ大丈夫ですか、と。
返ってきたのは、了解ですの一言と、店の候補が3つ。
いま、その人と付き合ってます。
提案するとテストになるの。こちらの条件に乗れる人かどうか。ここで渋る人、遠回しに変えようとしてくる人は、交際が始まってからも合わせてくれません。1時間だけ、と先に言うのは失礼じゃない。防具です。
相手が場所を出してきたときも、見るところは決まってる。駅から近いか。こちらの生活圏を気にしたか。予算感を先に伝えてきたか。苦手なものを聞いたか。予約する前にひと言確認したか。ここに配慮が一つもない人は、この先も、こちらの都合を想像しません。
個室を提案されたとき、角を立てずに変える一言
断ったら気を悪くさせるかも。そう思って飲み込んだ子を、何人も見てきました。飲み込んだまま当日を迎えて、駅に着く頃には胃がキュッと縮んでる。
言い方は、拒否じゃなく事情にするとラクになる。
明日早いので、まずはカフェで1時間くらいでもいいですか。お酒に弱くて、初めての方の前だと緊張しちゃうんです。夜だと帰りが遅くなるので、明るいうちに◯◯駅あたりでどうでしょう。
理由なんて、本当じゃなくていい。ここで見るのは中身より、返ってくる反応のほうだから。分かりました、じゃあカフェにしましょう。これで合格。渋る、理由を細かく聞き返してくる、日を改めてまた同じ提案をしてくる。この時点で、もう会わなくていいんですよ。
60分で見るのは、話の内容じゃない
彼が何をしゃべったかは、あまり参考になりません。アプリ慣れしている人ほど、初回の会話はうまいので。
見るのは、扱い方のほう。
店員さんに水のおかわりをアゴで示した男性がいました。その瞬間、向かいの席にいた会員の女性は、鞄の持ち手を握り直したそうです。そこから先の話は、耳に入ってこなかったって。
注文を通すときの声の温度。おしぼりの受け取り方。伝票を持ち上げるときのため息。彼が店員さんに向けているその態度、半年後にあなたへ向く態度です。
しゃべる比率も見ておく。60分のうち50分が彼のターンだったなら、その人はこの先もあなたの話を聞きません。
で、いちばん精度が高いテストがこれ。
断ったときの反応。
もう一軒行きましょう、に対して、今日はこれで、と返してみる。ここで拗ねる人。押してくる人。急に黙る人。笑って流して、もう一度誘ってくる人。このどれかをやった人は、付き合ったあとも同じことをやります。あっさり引き下がる人は、ずっとあっさり引き下がってくれる人。
見極めるのはいい。ただ、面接官の顔にはならないで
審査員になれとは言ってません。
イベントでもよく見る光景があって、腕を組んで、相槌だけ打って、値踏みの目でじっと相手を見ている女性。本人は真剣に見極めてるつもり。向かいの席からは、ただ機嫌が悪い人に見えてる。
質問をしない。スマホを何度も見る。元カレの話が出る。この三つが揃うと、相手がどれだけ好印象でも次はなくなります。安全を守ることと、心を閉じることは、別の話だから。
背筋を伸ばして、笑って、聞く。そのうえで、帰る時間だけは自分で握っておく。ちゃんと両立しますよ。
待ち合わせから解散まで、こう動く
改札で待ち合わせ。店は、自分が入ったことのある場所にする。
最初の5分はコーヒーの味がしない。それでいい。喉が渇いてるだけだから。
30分あたりで、写真と本人のギャップの話題が終わります。ここからが本番。写真と違いますねと言われたときの返し方、なかなかの見どころ。すみません盛りましたと笑える人は、都合の悪いことを隠さない人です。
45分。相手が質問をしてくる人かどうかが、はっきり出る。ずっと自分の仕事の話をしているなら、もう答えは出てますよ。
60分。スマホを見て、そろそろ、と言う。ここを守れるかが全部。楽しくても切る。楽しいときこそ切る。
別れ際に次の日程が具体的に出たら、脈あり。解散して1時間以内に連絡が来るのも、かなり分かりやすいサイン。また今度ごはん行きましょう、で止まったなら、その今度は来ません。
帰りは同じ車両に乗らない。改札で手を振って、別々のホームへ。
60分で切ったあと、2回目はどう作るか
いい人だったのに、そのまま消えた。これ、けっこう起きてます。
1時間で切るぶん、次の入口は自分で開けておく。店を出て改札へ歩く道で、また会いたいです、とだけ言う。日程まで詰めなくていい。この一言があるかないかで、相手の帰り道がまるっきり変わるの。
家に着いてからのLINEは、その日のうちに。楽しかったですの一行より、話に出た固有名詞を一つ拾うほうが効きます。あのラーメン屋、調べたら本当に行列でした、みたいな。ちゃんと聞いてましたよ、という証拠になるから。
2回目は、1回目より少しだけ長く。90分の食事くらいでちょうどいい。距離って、階段で上がるものなんですよ。エレベーターで一気に上がろうとした人が、だいたい途中で落ちてる。
合わなかったら、その日のうちに一言
断り方が分からなくて3週間放置した子がいました。相手からのLINEが日に日に長くなって、最後は、返事くらいくれてもいいのでは、と来たらしい。画面を見せてもらったとき、彼女の指はスクロールの途中で止まったまま動かなかった。
引きずると、相手の期待は勝手に育ちます。育った期待は、折られた瞬間に刃物になることがある。
その日のうちに送る。理由は書かない。丁寧すぎる文章は、余白を残してしまうから。余白って、相手の中で希望に化けるんですよ。
会う前にやっておく、地味な備え
友人に、相手のプロフィール画面と、店の名前と、会う時間を送っておく。スクショ一枚で足ります。
スマホのアラームを60分後にセット。鳴ったら、それが合図。
このあと予定があるので、と先に伝えておく。嘘をつく必要すらないの。家に帰るという立派な予定があるので(笑)。

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