サークルの飲み会で、隣に座った男性が三十分もしないうちに仕事の愚痴をこぼしはじめた。声がすっと低くなって、缶ビールを両手で包むみたいに握ってる。相手をしてた女性は、うんうん、と頷くだけ。否定もしないし、こうすれば?も言わない。お開きになるころ、彼は頭をかきながら、なんかめっちゃ喋っちゃった、って照れてた。
狙ってやってたわけじゃないらしい。後から本人に聞いたら、ただ聞いてただけなんだって。でもあの三十分で、彼の中の何かが確かに動いたんだよね。二人、半年後には付き合ってた。
男が本音を出せる相手は、驚くほど少ない
男性が甘えるのは、情けない自分を見せても評価が落ちない、そう確信できた相手だけ。ここでは減点されない、って体が判断した瞬間に、ようやく鎧を外すんだよね。
うちのイベントには、いわゆるモテる男性もよく来る。仕事ができて、場の空気を回すのが上手くて、女性の視線がじわっと集まるタイプ。でもね、そういう人ほど外では弱音を吐かない。吐けないの。期待に応え続けてきた人間って、崩れる姿をさらせる場所を、そもそも持ってなかったりする。
心理学でいう自己開示は、信頼できる相手にしか起きないとされてる。しかも片方が弱さを見せると、もう片方も返したくなる返報性が働くの。つまり彼が本音をこぼせる相手っていうのは、それだけでもう特別な椅子に座ってるってこと。恋のスタート地点で、他の候補と横並びになってない。地味だけど、決定的。
反対に、何回会っても雑談どまりの相手には、彼は一生鎧を着たまま。優しくされても、面白くても、安全だと感じるかどうかはまったく別の話なんだよね。
尽くすのと甘えさせるのは、まるで別物
尽くせば愛される、って信じてる人、たいてい損してる。
忘れられない光景がある。ある女性は、気になる彼のドリンクを頼み、脱いだ上着を預かり、終電を調べて、次の店まで押さえてあげてた。かいがいしいの。周りから見ても、よくやるなあって感心するくらい。でも三ヶ月後、彼女は目のふちを赤くしてうつむいてた(泣)。あれだけ動いたのに、彼はまったく別の子と付き合ったから。
なんでだと思う? 彼女がやってたのは甘えさせることじゃなくて、甘やかすことだったの。世話を焼く。先回りする。それって相手を子ども扱いしてるのと紙一重でね、男のプライドをそーっと削っていくんだよ。しかも見返りを待ってるのが透けた瞬間、優しさがぜんぶ重さに変わる。
後日、別の男性がぽろっと言ってた。やってもらうと最初は楽なんだけど、だんだん申し訳なくて距離を置きたくなる、って。世話って借金みたいなもので、積もると返せなくて逃げたくなるらしい。切ないよねぇ。
甘えさせるは、真逆なんだよ。相手が自分から弱さを差し出してきたとき、それを驚かず、責めず、そのまま受け取ること。手を動かして世話するんじゃない。ジャッジをやめるだけ。動くより、動かないほうが難しい。でもこの差が、二年後に隣にいる人を変えるの。
甘えさせ上手な子が、実はやってること
現場で見てると、彼女たちの共通点はやっぱりテクニックじゃなかった。まず、顔色をうかがわせない安定感。機嫌が天気みたいにコロコロ変わらないから、男性は地雷の位置を気にせず本音を置ける。今日は触れないほうがいいかな、って探らせた時点で、彼はもう甘えないんだよ。
聞くときも、解決しにいかない。うん、しんどかったね、で止める。ここで、じゃあこうしたら?を挟むと、彼はスッと鎧を着直す。アドバイスは求められてから。求められるまでは、ただ隣にいる。それでいい。
いちばん効くのが、自分の弱さを先に見せること。実はわたしもこれ苦手でさ、って一枚脱ぐと、相手も脱ぎやすくなる。さっきの返報性、あれが恋愛でもちゃんと起きるの。甘えさせ上手な子は、たいてい甘えられ上手でもある。ここ、覚えといて損はないよ。
隙、って言い換えてもいいかもね。完璧に見える人の前で、人は情けない話をしづらい。ちょっと抜けてる、たまに頼ってくる、そういう余白が呼び水になるんだよ。強くあろうと頑張るほど、相手が甘え込む隙間は逆に狭くなる。皮肉じゃん。
甘えてくる男性心理は、本命かどうかで全然ちがう
ここから逆のケースね。彼のほうから甘えてきたとき、それが脈ありなのか、ただの気まぐれなのか、見極めたいでしょ。ここ、びっくりするくらいきれいに分かれるの。
本命に見せる甘えは、弱さの方向にいく。疲れた、しんどい、実は不安なんだ、みたいに、かっこ悪い自分を渡してくる。対して誰にでもする甘えは、可愛がられたい方向。かまって、褒めて、すごいでしょ、そっち系。前者は信頼の証で、後者はただの承認欲求。この二つを混同すると、けっこう痛い目を見るよ。
急に甘えてくるようになった、っていう相談もめちゃくちゃ多い。距離が縮まって、この人の前なら崩れていい、って感じ出したサインのことが多い。ただし油断は禁物。都合よく使われてる甘えと、見た目がそっくりなんだよね。
脈ありのほうは、弱ってるとき他の誰でもなく自分を呼ぶ。金曜の夜、用もないのにポツリと、今なにしてる?が飛んでくる。将来の話に、気づけばこっちが自然と混ざってる。一緒にいて沈黙しても、気まずくならなくなってる。このへんが揃ってきたら、彼の中にもう椅子が置かれてる。
その一方で、甘えてくるくせに会う日はいつも彼の都合が最優先。連絡が来るのは決まって深夜か、暇を持て余したときだけ。しかもこっちが弱ってるときには、見事に興味を示さない。それ、甘えられてるんじゃなくてね、消費されてるの。ドキッとした人、いるっしょ。その関係、続けるほど自分がすり減るよ。優しさを都合よく引き出されてるだけの相手に、椅子を用意してあげる義理なんてない。
彼が甘えてくれない
彼が素を見せてくれないと、自分に魅力がないからだ、って落ち込む人、本当に多い。違うからね。
甘えないのは、まだ安全だと感じきれてないだけ。昔、弱みを見せて笑われた経験があるとか、家庭で甘えることを許されずに育ったとか、理由は彼の側にあることがほとんど。しっかりした女性ほど、相手もつられて気を張っちゃって崩れにくい、って現象もあるの。あなたが隙を見せられないと、彼も見せられない。合わせ鏡なんだよね。
うちのメンバーに、バリバリ働く女性がいた。会うたび完璧で、隙がなくて、なのに恋がいつも途中で止まる。ある夜、寝不足でメイクもちょっと崩れたまま来て、正直もう限界かも、ってぽつりとこぼした。その場にいた男性が、めずらしく身を乗り出したの。次の週、彼のほうから連絡が来たらしい。強さじゃなくて、崩れた一瞬が扉を開けた。あの子、いまだにそのこと不思議がってる(笑)。
だから焦って世話を焼きにいかないで。先に自分がひとつ、情けない話をこぼしてみる。それだけで場の空気がふっとゆるむ瞬間を、何度も見てきた。彼が鎧を脱ぐかどうかは、あなたが先に脱げるかにかかってたりするんだよ。
時間もかかる。半年、一年、じわじわ安全が積み上がって、ある日ふいに弱音が出る。単純接触といって、顔を合わせる回数そのものが警戒をほどく効果も知られてる。焦らないで、って言うのはそういうこと。

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