ビアガーデン企画、乾杯からまだ十五分。ジョッキの泡もろくに減ってないのに、もうその子、LINE交換してた。
早すぎでしょ…と心の中でツッコミながら、私はグラスを持つ手を止めた。
声をかけた男の子は、さっきの自己紹介で「彼女いるんで、今日はガチで楽しみに来ました」って笑ってた子。しかも結構ハキハキ言ってたのに、気づけば隣のテーブルの子に連絡先聞いてる。おいおい、さっきの宣言はどこ行った!
社会人サークルを立ち上げて毎月イベントを回してきて、この瞬間を数えきれないくらい見てきた。彼女がいるのに、他の女の子に手を伸ばす男。
正直これ、レアケースじゃない。うちのイベントだと月イチどころか、ほぼ毎回誰かがやってる。人のことジロジロ見てて性格悪いって言われそうだけど、主催者ってこういうの嫌でも視界に入ってくるんだよね。
彼女持ちが手を伸ばしてくる理由
言い訳のバリエーションは意外と少ない。何十人分も聞いてきて、結局パターンは三つに収まる。
一番多いのは、モテを確認したいだけのタイプ。彼女という安全地帯があるから、断られても失うものがない。ダメ元で連絡先を聞いて、既読がついた瞬間だけニヤける。付き合う気なんて最初からないし。ある忘年会の二次会で、このタイプが同時に三人の女の子にLINEを送っててさ。しかもスマホの画面、堂々と見せてくるくらいノリノリで自慢してきた。彼女いるのにって聞いたら「バレなきゃセーフっしょ」だって。悪びれる様子もゼロ。背筋がゾワッとした。
次に多いのが、彼女に飽きてて次を探してるタイプ。聞いてもいないのに彼女の愚痴を挟んでくる。相談に乗ってほしいって顔しながら、実際は品定めしてるだけ。これ、地味に要注意サインだから。愚痴を聞かされてる時点で、あなたはもう次点候補にエントリーされてる。ハイキング企画で会った男性は「彼女とはもう終わってるようなもんで」って三回は言ってたのに、半年後、SNSでその彼女とお揃いの指輪の写真上げてた。終わってなかったんかい…はぁ。
三つ目、単純に体目的。忘年会の帰り、タクシー一台に強引に誘導しようとした子がいた。肩に手を回すタイミングだけはやたら早い。スキンシップの速さと、二人きりの誘いを急ぐ感じ、この二つが揃ったらほぼ確定でいい。
本気で好きになって、彼女がいても諦めきれずに動く男もいる。ゼロとは言わないよ。でも本気なら順番が違うでしょ。彼女と別れてから来るのが筋で、アプローチが先に来た時点でもう答えは出てる。
友達のふりを長く続けるタイプもいる。彼女がいることを隠しもせず、友達として仲良くなってから、タイミングを見て距離を詰めてくる。この場合、下心に気づくのが一番遅れる。相談相手として信頼を積み上げてから動くから、断りづらい空気まで作られてしまう。一番厄介なのは、実はこのタイプかもしれない。
彼女がいる男の方が、実はアプローチのハードルが低い。現場にいるとすごく実感する。フリーの男は本命探しの真っ最中だから、断られたら地味に痛手になる。でも彼女持ちは違う。今の関係を失うリスクがないまま、追加のリターンだけ狙える。ノーリスクハイリターンの構造に、本人すら気づいてないことも多い。無意識に、一番安全な賭けを打ってるだけ。
心理学でいう損失回避ってやつに近い。人は得をすることより、損を避けることを優先して動く生き物らしい。彼女を失うリスクを負わずに、新しい可能性だけ試せるなら、そりゃ動いて当然。ずるいとかセコいとか言う前に、そういう構造が用意されてる時点で、向こうにとっては動かない方が不自然なくらいなんだと思う。
この構造を知らないまま関係にハマると、後から抜け出すのが本当にしんどい。時間も気持ちも先に投資しちゃってるから、途中でおかしいと思っても、もったいなくて手放せなくなる。だからこそ、早い段階で見抜く力が要る。
主催者目線で言うと、この手のトラブルが起きると、コミュニティ全体の空気も微妙に悪くなる。本人たちは気づいてないけど、周りはちゃんと見てるし、ちゃんと覚えてる。次の企画で急に人が減ってたりするのは、大抵このパターンが理由だったりする。
本気か遊びか、現場で見抜くポイント
じゃあ、目の前のその人が本気なのか遊びなのか、どこで見抜くのか。何百組も見てきて、結局チェックすべきところは同じところに集約される。
まず期間。出会って一週間やそこらでグイグイ来るのは、まず遊び。本気の場合、時間をかけて信頼を積もうとする傾向が強い。焦って距離を詰めてくる人ほど、実は失うものが少ない立場にいる。
次に一貫性。LINEでは情熱的なのに、みんなの前では素っ気ない。この温度差が激しい人ほど危険信号。本気なら、周りの目なんて気にせず態度に出る。隠れてコソコソする時点で、彼の中でその関係はやましいものだって自覚があるってこと。
会う場所の選び方にも本音が出る。人目のある場所を選ぶか、わざわざ人目を避けた場所を指定してくるか。堂々と会えない関係だって、本人が一番わかってる証拠。
あとはSNSの使い方も見逃せない。彼女との写真を隠すように投稿してる人と、堂々と載せてる人とでは、その関係への向き合い方が根本的に違う。隠したがる人ほど、あなたに対しても本気になった瞬間、同じように隠そうとしてくる。
うちのイベントで、複数の女の子から同時に同じような相談を受けたことが二回ある。一人だけに向けてると思ってた優しさが、実は全員に配ってた優しさだったってオチ。仲間内で情報が回るのは、社会人サークルあるあるだから、気になったら周りにさりげなく聞いてみるといい。
あと、お金と時間の使い方。本気の人は、自分の予定を削ってでも会おうとするし、割り勘にこだわらない。逆に、いつも急な誘いで、こっちの予定を最優先させようとしてくるだけの相手は、都合のいい時間だけ利用しようとしてるだけ。
アプローチされたのは魅力のせいじゃない
彼女持ちに言い寄られると、どこかで「私に魅力があるから」って思いたくなる。気持ちはわかるよ、わかるけど。現場で見てきた感覚だと、それちょっと違う。
彼らが見てるのは魅力じゃなくて、隙。断られても傷が浅そうとか、彼女いないから遠慮なく押せそうとか、そういう構造的な計算のほうが先に来てる。優しく相槌打っただけで脈ありと勘違いされたり、丁寧に返信しただけで期待させちゃったり。あなたの人柄の良さが、都合よく利用されてるだけのケース、かなり多い。
恋愛カウンセリングの現場でもよく言われる話で、承認欲求が強い人ほど、リスクの低い相手を無意識に選んで近づいていく傾向があるらしい。彼女という保険を持ったまま動けるあなたは、まさにリスクの低い相手にされてる。
うちのサークルでも、誰にでも分け隔てなく親切な子ほど、この手のアプローチを受けやすい傾向があった。冷たいわけじゃなくていい。ただ、最初から一線だけはっきり引いておく子には、彼らは最初から近寄ってすらこない。労力に見合わないってわかってるから。
現場で効いた断り方、こうやって切ってきた
見極めがついたら、次は切り方。ここで甘さを出すと長引くから。うちのイベントで実際に効果があった対応、書いていく。
LINEで距離を詰めてくる場合、既読スルーで放置するのはむしろ悪手。あいまいなまま関係が続いて、向こうに期待だけ残っちゃう。「彼氏彼女みたいな関係にはならないので」って一文だけ返して、それ以降は業務連絡だけにする。優しい言い訳は要らない。
インスタのDMでコソッと来るタイプもいる。表では普通の友達面してるのに、DMだけ妙に距離が近い。この場合、既読無視より先に、みんなが見える場所での会話に引きずり出す。ストーリーの返信も、グループで共有できる話題に変換して、個人的なやり取りの余地を削っていく。
サークルや職場みたいに今後も顔を合わせる相手の場合、急に無視すると場の空気が悪くなる。普通に挨拶はしつつ、二人きりの誘いだけ機械的に断る。「その日は別の予定があって」を毎回使えばいい。理由を変える必要はない。むしろ理由を変えるたびに、相手は攻略の糸口を探しちゃうから。
二人きりに誘われたら、その場で断る。後で断ろうとすると、断りづらい空気を先に作られてから切り出すことになる。「二人よりみんなで集まる方が好きなので」でいい。
一番厄介なのが「彼女とはもう別れるつもり」ってセリフ。これ聞いた瞬間、心のどこかギクッとする人、多いはず。でもこれ、九割方ただの前置き。別れるつもりがあるなら別れてから言えばいい話で、別れる前に予約取ろうとしてる時点で、彼はまだ彼女を手放す気がない。本当に別れる覚悟がある人は、まず身辺整理してから来る。順番を間違えてる人の言葉に、重さなんてない。「別れてから連絡してください、それまでは会いません」で終わらせて構わない。
絶対にやったらダメな対応
一番やっちゃいけないのが、悪い人に思われたくなくて、あいまいに流すこと。「彼女いるのにそういうのはちょっと」みたいな遠回しな言い方は、優しさじゃなくて先送り。相手には伝わらないし、むしろ脈ありと解釈されちゃう。
二人きりのご飯、既読はつけるけど返信は遅めに、みたいな駆け引きも危険。駆け引きのつもりが、相手にとってはただの脈ありサインになるから。
彼の彼女の話を親身に聞きすぎるのもよくない。相談に乗ってるうちに、いつのまにか一番近い存在にされちゃう。彼女の愚痴が出てきた時点で、聞き役は引き受けない方がいい。
奢られたご飯やちょっとしたプレゼント、軽い気持ちで受け取るのもやめた方がいい。もらった側は借りを感じて強く出づらくなるし、渡した側はますます脈ありだと思い込む。悪循環でしかない。
SNSで思わせぶりな投稿にいちいち反応するのも危険。いいねやコメントひとつで、期待を持たせてしまうことがある。反応する基準は、彼女の前でも堂々とできる内容かどうかで決めるといい。

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