夜、お風呂から上がってふと鏡を見たとき、なんかぼんやりしてた、ってこと、ないですか。
肌の調子とか、髪のパサつきとか、そういう話じゃなくて。目の光、みたいなもの。なんか…ないな、って思う瞬間。
社会人イベントサークルを運営していると、そういう目をした40代の女性参加者に、ちょいちょい出会う。初めて来た日は、どこか遠慮がちで、笑顔はあるんだけど、どこか奥の方が閉まってる感じがする。ああ、久しぶりに自分のために来た人だなって、わかるんだよね。
でも、2回目、3回目と来るうちに、その人たちの雰囲気が変わっていく。声のトーンが上がる。歩き方が変わる。誰かと話すとき、胸の前で両手を組んじゃうようなあの緊張が、だんだん解けていく。
ときめきって、恋愛だけの話じゃないんだよなぁ。
ときめきが消える理由は、恋愛だけじゃない
40代になって「ときめきを感じなくなった」と話してくれる女性たちの多くが、最初にこう言う。「夫とは仲悪くないんです。でも…なんか、ドキドキがないんですよね」
これ、すごくリアルな悩みだと思う。
仲が悪いわけじゃない。嫌いになったわけでもない。ただ、朝起きて、ご飯作って、仕事行って、子どもの迎えして、また夜が来て…その繰り返しの中で、気づいたら自分が「機能」になっていた、みたいな感覚。
恋愛心理の分野では、長期的なパートナーシップにおいて、脳のドーパミン分泌が安定・低下するのは自然なプロセスとされている。これはけっして愛情が薄れたことを意味しない。ただ、脳が「安全」を認識した結果として、興奮よりも安心を優先するモードに切り替わっているだけ。
つまり、ときめきが消えたのは、あなたの感受性が鈍ったんじゃなくて、脳が今の生活を「日常」として処理しはじめたからなんだよね。
「ときめきたい」は、罪悪感じゃなく本能
イベントで出会った40代既婚女性のAさん(仮名、44歳)が、ぽつりと言ったことがある。「なんか最近、ときめくことに罪悪感があるんですよね。既婚なのに、って」
その言葉に、その場にいた何人かが、ものすごく静かになった。
わかる、って口に出した人もいれば、黙ってうなずいた人もいた。
でも正直に言うと、ときめきは誰かを好きになることと、イコールじゃない。新しい映画を見て心が動くこと、好きなカフェで飲むコーヒーがやけに美味しいと感じる瞬間、久しぶりに着たワンピースを「あ、似合う」って思う刹那。そういう感覚全部が、ときめきの正体だったりする。
恋愛への渇望と、ときめきへの渇望は、似てるようで別物。それを混同してしまうから、罪悪感が生まれやすい。
Aさんはその後、趣味のフラワーアレンジメントを再開したらしくて、次のイベントに来たとき、なんか顔の輪郭がシュッとしてた。あ、眼が戻ってきたって思ったのを覚えてる。
見た目より先に変わること
ときめきを取り戻したい、と思ったとき、多くの人がまず外見に手をつける。ファッション、メイク、ダイエット…。それ自体は悪くない。でも、順番が違うと続かないんだよね。
ある40代女性Bさんが話してくれたエピソードがある。「イベントに来る前、めちゃくちゃ念入りにメイクして来たんです。でも緊張しすぎて、全然話せなくて。帰りの電車で鏡見たら、目だけ輝いてなくて、むしろ悲しくなりました」
その話を聞いた瞬間、すごく胸のど真ん中を突かれた感じがした。
外見を整えることは、ときめきを取り戻す「手段」ではあっても、「始まり」ではない。先に動かすべきは、もう少し内側の話。
内側から変わるための3つの入り口
ときめきを取り戻した女性たちを見ていると、ある共通点がある。それは、自分のために時間を使う習慣を、小さくてもいいから持っていること。
ひとつ目は、好奇心に従う習慣。気になってたお店に一人で入ってみる、ずっと読もうと思ってた本を買う、習ってみたかった楽器を調べてみる。どうせ続かないって思う前に、手を出すこと。完成しなくてもいい。始めた事実が、脳にドーパミンを出させる。
ふたつ目は、自分の感情に名前をつける練習。なんかモヤモヤするではなく、これは退屈なのか、それとも寂しいのかって、少し解像度を上げて考えてみる。感情の言語化は、自己理解の精度を上げ、必要な行動を取りやすくなる、という心理学的な根拠もある。感情を無視して走り続けていると、ある日突然、がくっと膝が折れる。
三つ目は、自分を喜ばせる練習を意図的にやること。誰かのためじゃなく、自分のためだけに何かを選ぶ経験。好きな花を一本買う、でも十分だったりするんだよね。
夫婦間にときめきを「引き戻す」のは可能か
「夫へのときめきは、もう無理なんでしょうか…」
イベントの後の飲み会で、Cさん(47歳)がワインを持ちながらそう言った。声のトーン、低かった。どこか笑ってたけど、目は全然笑ってなくて。
夫婦間のときめきは、意図的に仕掛けないと再燃しない、という話をカップルセラピーの文脈でよく聞く。マンネリの正体は、予測可能性の高さ。どうせこうなるがわかってしまうから、脳が新鮮さを感じられなくなる。
だとすれば、小さな予測外を日常に混ぜることが、ひとつの突破口になる。
いつもと違う夕食を作る、でもいい。普段しない話題を、夜に一つだけ振ってみる、でもいい。感謝をテキストで送ってみる、でもいい。どれも小さいことに見えるけど、脳はいつもと違うことに反応する。
Cさんは後日、旦那に久しぶりに手紙を書きました。バレンタインでもないのにと教えてくれた。なんか送った後、手が震えてたんですよ(笑)
そう、その手の震えがもう、ときめきの正体だったりする。
「かわいい」の賞味期限なんてない
40代に入ったとき、なんとなく「かわいい」という言葉を自分に当てはめることを、自分で禁止しはじめていないですか。
イベントで出会ったDさん(42歳)は、最初「私みたいなおばちゃんが来ていいのかなって思ってました」と言ってた。でも3回目あたりから、すごく好奇心を全面に出して話すようになって。そしたら、周りの人たちが、なんか自然に引き寄せられていった。
かわいさは、年齢よりも余白と好奇心の話だと思う。
自分に一切余裕がない状態、つまり常に消費されてる状態の人は、どんなに顔が整っていても、なんか近寄りにくいオーラが出る。逆に、自分のリズムで生きている人は、年齢関係なくふわっとした引力がある。
恋愛研究者のヘレン・フィッシャー氏らの研究によれば、人が魅力を感じる相手の要素として、自信・温かさ・ユーモアが上位に入る。外見は最初に影響するが、それ以降は内面的なエネルギーが関係性を作ることが多い。
かわいいって、整っていることじゃなくて、生きてることだよね。
自分を好きになるって、どういうことか
自分を好きになりましょうって、よく言われるじゃないですか。
でもあれ、正直ふわっとしすぎてて、何したらいいかわからないんだよね。
自己肯定感の研究では、自分を好きになるためには「小さな達成体験の積み重ね」が有効とされている。大きなことじゃなくていい。「今日は早起きできた」「久しぶりにストレッチした」「あの人に素直にありがとうって言えた」…そういう、誰も褒めてくれない達成を、自分で認めていくこと。
最初はすごく照れくさい。そんなこと…って思う。でもその照れが、むしろ証拠で。自分に優しくすることに不慣れな証拠。
Eさん(45歳)は毎晩、今日よかったことをスマホのメモにひとつだけ書くようにしたと言っていた。最初は本当に何もなくて、ご飯が美味しかった、とかしか書けなかった。でも3ヶ月後、なんか毎日探すのが楽しみになってました。
その探す楽しさが、すでにときめきなんだよなぁ。

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