イベントの二次会。居酒屋のいちばん端で、周りは笑ってるのに、その子だけ口角の位置が最初から変わらない。ふいに、こぼれるみたいな声。
「よく言われるんですよ、モテそうって。でも彼女、いたことなくて」
テーブルが静まったのは一瞬だった。すぐに飛んできたのが「またまた〜」の大合唱。誰も悪気なんてないの。ないんだけどさ、あの子、そのあと一度も自分の話をしなかったんだよね。社会人イベントの運営を続けていると、この光景に年に何度も出くわす。
相手が、勝手に予選敗退している
うちのイベントでは終わりに、気になった人を紙に書いてもらう時間を作っている。あるとき女性票がダントツで集まった男性がいた。20人中9票。それなのに彼、その日は誰とも連絡先を交換しないで帰ったのね。
気になって、票を入れた子たちに後日ぽつぽつ聞いた。返ってきた言葉がほぼ揃っていて、背中がひやっとした。
「絶対彼女いますよね、あの人」 「私が話しかけたら迷惑かなと思って」 「そもそも顔面の階級が違うので…」
誰も彼を嫌ってない。全員が、勝負する前に降りていた。
魅力度が高いと判断された相手ほど、拒絶されるコストを見積もって接近をやめる人が増える。高嶺の花効果と呼ばれるやつね。結果として、話しかけたい人が大量にいるのに実際に話しかける人はゼロという、歪な空白があなたの半径1メートルにできあがる。
自分の周りが静かなの、無関心のせいだと思ってた?逆だよ。混みすぎてて誰も入れないだけ。
期待値が上がるほど、自分から動けなくなる
34歳の男性会員さんの話。気になる女性と3ヶ月連絡を取り合っていて、まだ二人で会えていなかった。理由を聞いたら、今の距離感がいちばんいいので、と。そう言ったときの彼、テーブルの下でずっと親指の爪をいじってた。
モテそうというラベルは、こっちの許可なしにハードルを上げてくる。誘って幻滅されるくらいなら、期待されたまま止まっていたい。守っているのは自分のプライドじゃなくて、相手が抱いてくれた幻想のほうなんだよね。真面目な人ほどここでぐるぐるする。
厳しい言い方をすると、そのやさしさ、ただの現状維持です。
3ヶ月連絡を取り合った関係が、そこから恋人になる確率って、体感でかなり低い。相手のほうも、この人は誘ってこないんだな、と学習していくから。じわじわ友達の棚に移されて、ある日その子から結婚報告が届く。何人も見送ってきた光景だよ。
印象は満点、なのに中身を1ミリも渡していない
アンケートに、いい人だったんですけど結局どんな人か分からなくて、という感想が出る相手には共通点がある。質問がうまい。相手の話を広げて、深めて、笑わせて、自分の話は一切しない。完璧な聞き役。
アルトマンとテイラーが整理した社会的浸透理論では、関係の深まりは自己開示の深さと幅で進むとされている。人は開示された分だけ開示を返す。裏を返せば、渡さない人には誰も渡さない。好感度だけ伸びて、親密さが置いてけぼりになる構造。
失敗した話、いま少し困ってること、こだわりすぎてる趣味。そういう見せたら減点されそうな情報こそが、相手にとっては入口の鍵になる。
声をかけられる側の人生が、長すぎた
これがいちばん根深いかもしれない。
外見の評価が高い人って、10代から20代前半にかけて向こうから来てもらう経験を積み上げてる。だから待つのがうまい。うますぎる。イベントの席替えでも、動かない人はほんとに動かないのよ。呼ばれるまで座ってる。
でも30歳を越えたあたりから、向こうから来てくれる回数が急に減るじゃんね。既婚者が増えて、遊びの誘いも減って、出会いの総量が絞られる。そこで初めて、自分から行く筋肉を一度も鍛えてこなかったことに気づく。あの時もっと動いておけばよかった、って言った人、何人見たかな。
その言葉に、真剣さが入っていない
女性がモテそうと言うとき、恋愛対象として面白そうという意味と、この人は本命にはならなそうという意味が、同じ棚に並んでいることがある。慣れてそう、遊んでそう、私じゃ手に負えなさそう。全部まとめて、モテそう。
打ち上げの終盤、酔った女性がこぼした一言が忘れられない。かっこいいけど、付き合ったら心配で寝られなさそう、と。褒めてるのに、選ばない理由になってた。
誠実さって、顔からは出ないの。行動の量と、約束の守り方からしか出ない。
抜け出すためにやることは、3つだけ
彼女がいないことを、ネタにせず置く
自虐にすると相手は笑って流すしかなくなる。淡々でいい。休日ずっと家にいるよ、とか、去年から誰とも付き合ってない、とか。事実として渡すだけで、相手の中の予選敗退が一回取り消される。これ、効き方がちょっと怖いくらい早いよ。
二人きりの導線は、自分で引く
大人数の場で仲良くなっても、そこ止まりになる。集合写真の中の仲良し、で終わる関係ってあるじゃん。イベントの帰り道、駅までの5分。二次会で席を隣にする。その程度の小さな二人きりを、自分で作りにいくこと。
いきなりデートに誘わなくていいの。二人で話した時間の合計が10分を超えたあたりから、相手の中であなたの解像度が上がりはじめる。逆に、その10分を一度も作らないまま半年経つと、どれだけ好印象でも候補から静かに外れていく。人数の多い場所は、居心地がいいぶん時間の減りが速い。
完璧を、1個だけ壊す
方向音痴とか、辛いものが本当にダメとか、実は人見知りだとか。減点にならないダサさを1個だけ渡す。隙のある人が好かれるという話の正体は、これ。安心して近づいていい合図が出るってこと。
「モテそう」と言われた瞬間の、やっちゃダメな返し
ここからは即効性のある話をするね。
全力否定。いやいや全然、と手を振って終わらせるやつ。去年のイベントで、これを4回連続でやった男性がいた。4回目で相手の女性の視線がすっと下に落ちて、そのままスマホを触りはじめた。あれ、拒絶として受け取られてるのよ。褒めた側からすると、自分の見る目を否定された形になるから。会話が閉じるだけじゃなく、謙遜がそのまま壁として機能してしまう。
過剰な自虐。俺なんてゴミなんで、みたいなの。相手にフォローの義務が発生して、場の空気が重くなる。せっかく向けてくれた興味を、こっちが有料にしてる状態。
曖昧なスルー。あー、はい、で流すパターン。相手が勇気を出して投げた球を、グラブに当てずに見送る形になっちゃう。この3つ、現場でいちばん見る。
状況別、そのまま使える返し方
相手の気持ちを確かめたいなら、彼女がいない情報を混ぜて返す。そう見える?実際は去年からずっといないんだよね、みたいに。ここで相手が、えっ意外、そうなんですね、と前のめりになったら、それが答え。反応の速度でだいたい分かるよ。
場を明るくしたいときは、言われた回数だけ彼女ができてたら大変なことになってる、と笑いに変換する。モテそう止まりの人生、なかなか長いよ、も強い。自虐に見えて事実だから、湿っぽくならないの。
職場や年上の相手なら、そう見えるなら得してますね、くらいの温度が安全。そのあと相手の話に振ってしまえば角が立たない。
LINEで言われた場合は、急にどうしたの(笑)で一度相手に喋らせる。返信の速さで熱量を測ろうとするより、相手の言葉数を見たほうが正確。ここ、意外と見落とされてる。
彼女がいないことを伝えたい場面では、それがさ、いないんだよね、ずっと、で十分。飾らないほうが信じてもらえる。
飲み会で複数人の前で言われたときは、一度受け取ってから軽く落とす。ありがとう、その割に土日フルで予定空いてるけどね、みたいな。周りがどっと笑ってくれれば、彼女がいない情報がその場の全員に共有される。宣伝としてかなり優秀なのよ、これ。
同性の友達から言われたら話半分でいい。ただ、その子が女性を紹介できる立場なら、いま彼女いないから誰かいたら教えて、と一往復だけ足しておくこと。うちのイベントで紹介経由の交際が決まった人、ほぼ全員この一言を先に言ってたんだよね。
マッチングアプリのメッセージなら、写真の話に寄せないほうがいい。写真だけで判断されてる関係を、自分から写真の話で固定しにいく人が多すぎる。そう言われるけど実際は日曜にスープ煮込んでるタイプだよ、くらい生活を出す。返信の続き方が変わるよ。
元カノや女友達からの場合は、含みが入っていることが多い。あなたのことは知ってるけどね、という前置きが省略されているやつね。真に受けて自信をつけるより、何を見てそう思ったのか一回だけ聞き返したほうが収穫がある。
好きな人以外から言われた場面も、雑に扱わないこと。その場にいる全員が聞いてる。誰に対しても同じ温度で返す人が、まわりまわって本命に届くよ。

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