交流会の受付で、ひとりの男性が名札を書きながら、ぼそっとつぶやいた。「俺、電話だと十中八九、女の人に間違えられるんですよね」。声のトーンは、確かに高め。でも私が引っかかったのは声そのものじゃなくて、ペンを持つ指先がかすかに震えてたこと。この人、声のこと相当気にして生きてきたんだろうな。それだけで伝わってきたんだよね。
社会人向けのイベントサークルを何年も回してると、この手の悩みを抱えた男性に、びっくりするほど出会う。声が高いから恋愛でナメられる、低い声のやつばっかりモテてズルい、って。気持ちはわかる。わかるんだけど…現場で何百組ものカップリングを横で見てきた立場から言わせてもらうと、その悩み、半分は的外れ。声を低くする努力に全振りしても、たぶん報われない。ここ、はっきり言い切っておくね。
そもそも声が高いとモテないは本当なのか
まず声が高いだけでモテなくなる、なんて単純な話、現場では一度も観測してない。
うちのイベントで毎回やってる参加者アンケートがあってさ。男性の第一印象で気になった点を女性に書いてもらうんだけど、声の高さを挙げる人、正直かなり少ない。上位に来るのはいつも決まってる。目が合わない。話が一方通行。清潔感がなんか惜しい。この三つで票の大半を持っていく。声の高さは、はっきり言って圏外なことがほとんど。
心理学の世界でも、初対面の印象は声より視覚情報が先に立つって話が知られてる。表情、姿勢、身だしなみ。相手の脳が真っ先に処理するのはそっち。声の高低が判断に混ざってくるのは、そのあと。声で減点される前に、女性はもう別のところを見終わってるってこと。
じゃあなんで声が高い男はモテないが定説みたいに広まってるのか。ここがミソ。犯人は声じゃなくて、声の高さに引きずられた本人の態度なんだよね。自分の声を恥ずかしいと思ってると、無意識に声が小さくなる。ボソボソ喋る。目線が泳ぐ。笑うとき、口を手で隠す。これ全部、声の高さより百倍マイナス。女性が引くのは高い声じゃなくて、自信のなさがにじみ出た仕草のほうなの。
女性が本当に見ているのは声の高さじゃない
ここで一人、忘れられない男性Kさんの話をさせて。
声は完全にテノール、なんならボーイソプラノ寄り。本人いわく、学生時代は電話でお母さんと間違えられ続けたらしい。うちのイベントに来た初日、Kさんは案の定うつむき気味で、声を張らずにモゴモゴ喋ってた。誰とも会話が続かず、早々に退散。
それが半年後、別人みたいになって戻ってきた。(え、別人?)。声は…相変わらず高い(笑)。1ミリも低くなってない!なのに女性陣の反応が明らかに違うの。輪の中心で笑ってて、連絡先を聞かれる側に回ってた。何が変わったのか本人に聞いたら、こう返ってきた。「声を低くするのは諦めて、代わりに、ちゃんと相手の目を見て、ゆっくり話すようにしただけです」。
これが答え。声質は据え置き。変えたのは喋り方と佇まいだけ。それで結果がひっくり返った。私、この光景を横で見ながら、胸のあたりがぎゅっとなったのを覚えてる。ずっと声のせいにして自分を責めてきた人が、声以外を変えるだけで報われた瞬間だったから。
女性が惹かれるのは、声の周波数じゃない。その人が自分の声とどう付き合ってるか、なんだよね。高い声でも、堂々と、まっすぐ話す人は魅力的に映る。逆にどれだけ低くていい声でも、ボソボソ自信なさげに喋られたら、ざわっと不安な空気だけが残るのさ。
高い声がマイナスになる場面、プラスに転ぶ場面
とはいえ、高い声が不利に働く瞬間がゼロかっていうと、それは嘘になる。
騒がしい居酒屋。BGMがガンガン鳴ってる立食パーティー。こういう場所だと、高くて細い声はどうしても埋もれやすい。相手が何度も「え?」って聞き返してくるうちに、会話のテンポがガクッと崩れる。これは物理の問題だから、気合いじゃどうにもならない部分もあるんだよ。
でも裏を返せばさ。それ以外の場面では高い声、けっこう武器になる。近い距離でのふたりの会話。カフェでの落ち着いたトーク。高めの声は明るく聞こえて、親しみやすさが出やすい。距離が縮まるのが早いんだよね。実際うちのイベントでも、声が高い男性ほど女性から話しかけやすかったって言われること、多い。威圧感がないから、初対面のガードが下がるのが早いの。
低い声にはたしかに安心感がある。でも同時に、ちょっと怖い、近寄りがたいって受け取られるリスクも背負ってる。高い声にはその逆のカードが配られてるってわけ。使いどころさえ間違えなければ、ちゃんと戦えるよ。
なぜ声が高いのか、原因を分けて考える
ここからは実践の話。そもそもなんで声が高いのか、正体を分解しておくと打ち手が見えてくる。
原因はざっくり三つに散らばってる。ひとつは骨格。喉仏や声帯の大きさは生まれ持ったもので、ここはもう、変えられない領域。持って生まれた楽器の個性みたいなもんだと思ってほしい。
ふたつめが発声のクセ。喉だけで声を出す、いわゆる喉声ってやつ。息が浅くて、胸から上だけで喋ってる状態。これは後天的なクセだから、直せる。実はここが一番デカい。声が高いと悩んでる人の多くは、生まれつきというより、喋り方のクセで実際より高く響いてるだけだったりするから。
三つめが緊張。人前に出ると喉がキュッと締まって、声がうわずる。心臓がバクバクして、息が上がって、いつもより高い声が飛び出す。合コンや初対面でだけ声が裏返る人は、これ。骨格じゃなくてメンタルが喉を締めてるんだね。
自分の高さがどこから来てるか、まずここを見極める。骨格由来なら、低くする方向で消耗するのは無駄。でもクセや緊張由来なら、手の打ちようはいくらでも残ってる。
自分でできる声の育て方
低くしようと喉に力を入れるのは、真っ先にやめてほしい。あれは逆効果。喉を潰しにいく喋り方は、声がかすれるだけで、深みなんて出ない。目指すのは低い声じゃなくて、響く声だから。
まず息の入れ方から。お腹に空気をためて、そこから声を押し出す腹式呼吸。仰向けに寝転がって、お腹に手を当てて、息を吸うとお腹が膨らむのを確認する。あの膨らみのまま声を出せると、声が喉から下に降りて、ぐっと落ち着いて聞こえるんだよね。高さそのものより、この安定感が効く。
それから喉を開くこと。あくびをする直前の、喉の奥がふわっと広がるあの感覚。あの状態で喋ると、声が細く尖らず、まろやかに広がる。狭い喉から絞り出した声って、キンキン響いて幼く聞こえがち。喉を開けるだけで、同じ高さでも印象がずいぶん変わってくるよ。
共鳴を胸に持ってくる意識も効く。声を頭のほうじゃなくて、胸に響かせるイメージ。胸に手を当てて、喋りながら振動を感じられたら成功。この響きが乗ると、高い声でも薄っぺらさが消えて、厚みが出るの。周波数は同じでも、聞こえ方が全然違ってくる。
毎日五分でいい。この三つを、風呂場ででも回してみて。数週間で、電話で母親に間違えられる頻度、たぶん減ってくるから。
やってはいけない下げ方
一方で、絶対にやっちゃダメなパターンもあるんだよね。
無理やり喉を締めて出す、作った低音。あれは一発でバレる。声が不自然にこもって、喋るたびに喉が疲れて、長く続かない。しかも本人が無理してるのが、聞いてるほうにも伝わっちゃう。ぎこちなさって、声より雄弁に緊張を語るからさ。
低い声を意識するあまり、ボソボソと小さく喋るのも最悪手。低くはなったけど、今度は聞こえない。相手が身を乗り出して「ん?」って聞き返す。会話が途切れる。高くて聞こえる声のほうが、低くて聞こえない声より百倍マシに決まってるっしょ。音量を犠牲にした低音に、価値なんてないよ。
声だけ低くしても、実はあまり効かない理由
もし努力が実って声が低くなったとして、それだけでモテ始めるかっていうと…残念ながら、そうはならない。
さっきのアンケートの話、思い出してほしい。女性が気にしてたのは、目が合わない、話が一方通行、清潔感が惜しい。この三つだったよね。声の高さは圏外。ってことは、声を低くしても、この三つが放置されてる限り、評価はほとんど動かないの。
低い声は入り口の印象を少し良くするだけ。そのあと会話が弾むかどうか、また会いたいと思われるかどうかは、声の高低とはまったく別のレイヤーで決まってる。声を低くする作業に全部のエネルギーを注いで、肝心の中身が空っぽ。これが一番もったいない失敗のかたち。現場で、これで空回りしてる男性、何人も見てきたよ…。
声より効く、話し方という本命
じゃあ何を鍛えるのが正解か。声の高さより、喋り方のほうを磨く。ここに賭けたほうが、リターンがでかい。
まずスピード。早口は、それだけで余裕のなさを露呈する。まくし立てられると、聞いてる側の心拍がなぜかこっちまで上がってくるんだよね。ゆっくり話すだけで、声の印象は落ち着く。高い声でも、テンポが遅ければ、慌ただしさが消えて、大人っぽく届く。
次に間。喋りっぱなしにしない。一文言い終わったら、ひと呼吸置く。この沈黙を怖がらない人が、モテる。間があると、相手は話を受け止める時間ができる。言葉に重みが乗るのさ。沈黙が怖くてしゃべり続ける人ほど、軽く見られちゃうんだよなぁ。
そして抑揚。ずっと同じ調子で流さない。大事なところで、少し声を落とす。強弱をつける。この緩急がある人の話は、高い声でも、ちゃんと聞き入ってもらえる。
声の高さは変えられなくても、速度も、間も、抑揚も、今日から変えられるよ。しかもこっちのほうが、女性の心をずっと動かす。声を低くするんじゃなくて、話し方を変える。これがモテ声の正体だと、私は現場で確信してる。
声が高いままモテてる男に共通すること
最後に。うちのイベントで声が高いのにちゃっかりモテてた男性たちを思い返すと、みんな共通点があった。
自分の声を、恥ずかしがってなかったの。むしろネタにして笑い飛ばしてた。俺、電話だと女子だと思われるんですよ(笑)って、自分から先に言っちゃう。そうやってオープンにされると、こっちも身構える必要がなくなって、ふっと空気がゆるむ。コンプレックスって、隠すほど重くなって、さらけ出すほど軽くなる。あの人たちは、それを本能で知ってたんだろうね。
声の高さは、生まれ持ったもの。そこと戦い続けて消耗するより、その声のまま、目を見て、ゆっくり、堂々と話す。自分の声を面白がれるくらいの余裕を持つ。たったそれだけで、電話で母親と間違えられてた高い声のあの子が、連絡先を渡される側に回るんだよ。

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