「あの子、ほんとにいい子だと思ってたんですよ」 うちのサークルの打ち上げで、彼がグラスの縁を指でなぞりながらこぼした夜のこと、まだ覚えてる。マッチングアプリで知り合った女性に、三回目のカフェで急に収入の話をされた、と。笑ってるのに、目の奥が全然笑ってなくてさ。
社会人向けのイベントを何年も回してると、この手の話が毎月みたいに集まってくる。恋活のつもりで登録した人が、気づいたら副業の説明会に連れて行かれてた、みたいな。
そもそも、なんでアプリに勧誘の子が多いのか
勧誘目的の女性にとって、アプリほど都合のいい場所はない。登録は無料か格安。待ってれば男性から次々といいねが飛んでくる。連絡先を一晩で何十件も集められる。この効率のよさが、彼女たちを吸い寄せてるんだよね。
うちのイベントも、一時期けっこう標的にされてた。可愛い子が友達を連れて参加してくれる。会場が華やいで、こっちも頬がゆるむ。そう思ってたら、後日その子たちがうちの常連さんを別のバーベキューに誘って、そこで投資の話を…という筋書き。運営してると、人を値踏みする視線って分かるようになるの。会場をぐるっと見渡す時の、獲物を探すあの目つき。
アプリだけの話でもないの。街コンや社会人サークルの飲み会も、彼女たちにとっては同じ猟場。女性は参加費が安いか無料のことも多くて、一晩で二十人ぶんの連絡先が手に入る。ご飯もお酒もついてくる。だから恋活イベントには、恋を探しに来た人と、獲物を探しに来た人が、同じ部屋に混ざってるってわけ。運営してるこっちは、その線引きを毎回どきどきしながら見張ってるんだよね。
はっきり言うね。恋活の場に稼ぐ話を持ち込む人は、恋愛をしに来てない。
会う前に、もうかなり分かる
正直、会う前に半分以上見抜ける。まずプロフィール写真。ビーチリゾート、高級ホテルのラウンジ、ブランドの紙袋を提げた一枚。キラキラをこれでもかと積み上げてくる。なのに、仕事の中身がふわっとしてるの。自営業、フリーランス、その他。何やってるか具体的に書いてない。稼いでるアピールだけは全開なのに、稼ぎ方が霧の中。この二つが揃った時点で、恋の相手からは外していい。
自己紹介文に、ご縁に感謝、出会いに感謝、みたいな言葉が並んでたら濃厚度がぐっと上がる。やたら人生充実してますアピール。夢、目標、自由。そういう単語が恋愛アプリの自己紹介にいくつも出てくるの、冷静になると妙じゃない?恋人を探しに来てるはずの場所で、なんで意識高い系のプレゼンみたいな文章なのって。
メッセージが始まってからもサインは出るよ。会話が不自然なくらい滑らかで、褒め言葉が多すぎる。まだ数通なのに、一緒にいると落ち着きそう、なんて言ってくる。(いや、まだ会ってすらないが?)って心の中でツッコんじゃうやつ。それから、アプリ内のやり取りを早々に切り上げて、LINEに移りたがるの。運営に勧誘を通報されると困るから、外に連れ出したいんだよね。ここでうっすら違和感がよぎったら、その勘、たいてい合ってる。
それとね、会話の中で妙に将来の話を掘ってくる子も注意。今の収入に満足してる?このまま会社員で終わって不安じゃない?一緒に夢、考えてみない?この流れ、聞こえはロマンチックなんだけどさ。稼ぐ手段として彼女たちのビジネスに着地させるための、ただの助走なの。恋人と未来を語り合ってるつもりが、いつの間にか稼ぎ方の話にすり替わってる。気づいた頃には、もう説明会の日程を提案されてたりするから。
会ってからは、型がある
会う流れになったとして。危ないパターンには、はっきりした型があるんだよね。
ひとつめ。初対面なのに、大人数の集まりに誘ってくる。二人で会うのが自然なアプリなのに、いきなりバーベキュー、テニス、二十人三十人規模の飲み会。これは囲い込み。楽しい空気の中で複数人に囲まれると、人の警戒心ってびっくりするほど溶けちゃう。みんなにこにこフレンドリーで、居心地がいい。その和やかさの隙間に、自分たちのやってるビジネスの話がすっと差し込まれる。直接は売らないの。楽しかった記憶ごと、この人たちを信じさせる。この設計が、まぁ巧妙でさ。
うちのイベントで知り合った三十代の男性が、まさにこれにやられかけた。アプリで会った子に、友達とボウリングするから来ないかと誘われて。行ってみたら十五人くらいの初対面の集団。ゲームは盛り上がって、彼もつい混ざって楽しんじゃった。で、帰り道に別の参加者から、もし収入が増えたら何したい?って聞かれた瞬間、あ、これやばいやつだ、と足が止まったって。その話をしてる時の彼の背中、ずっと汗ばんでたなぁ。間一髪で説明会には行かなかったけど、あの数時間は返ってこないよねぇ。
ふたつめ。カフェで二人きり。少し打ち解けたところで、尊敬する先輩を紹介したいと言い出す。で、その先輩が合流して、二対一の構図になる。楽に稼げる方法があるとか、安く海外に行けるとか、体の不調はないかとか。にこやかに、先輩がそういう話を始めるの。ここまで来たら、その場にお茶代を置いて立っていい。会ってしまった時点で時間はもう溶けてる。でも、お金とこれ以上の時間は、まだ守れるから。
小ネタをひとつ。会話で好きな本を聞かれて、あるいは向こうが勧めてきた一冊が、金持ち父さんのあれだったら、警戒メーターを一段上げていい。本そのものが悪いんじゃないの。ただ、この界隈で妙に神様みたいに扱われてる本なんだよね。初デートで急に読書を勧めてくる時点で、恋の匂いはしないっしょ。
逆に、すぱっと見抜いた子もいてね。うちの参加者の女性なんだけど。相手のプロフィールが、職業その他、写真は全部海外の絶景、初回にいきなりバーベキュー。三点そろった瞬間にブロックしたって笑ってた。彼女いわく、恋する時ってもっと相手の中身が知りたくてメッセージ長くなるのに、この人は私に一ミリも興味なさそうだった、と。その観察、鋭いよなぁ。好意の演技には、あなた自身への関心がすっぽり抜け落ちてる。ここ、見分けの芯だと思う。
狙われやすい人って、いる
これ言うと、ちょっと胸がチクッとする人いるかも。でも現場で見てると、標的にされやすいタイプってあるの。優しくて、断るのが下手で、少しだけ寂しさを抱えてる人。悪口じゃないよ。むしろ人としてあったかい人ほど、彼女たちの好意の演技に、つい手を伸ばして応えちゃう。
ここだけは強く言わせて。狙われたのは、あなたがチョロいからじゃない。あなたが人に優しくできる人だから、そこに指を突っ込まれただけ。勘違いして、自分がバカだったと自分を殴りにいく人を、何人も見送ってきた。責める相手、違うからね。悪いのは、その優しさを金に換えようとした側でしょ。
好きになっちゃった後の、断り方
さて。見分けるより、ずっと難しいのが断ること。しかも相手にちょっと惹かれてた場合、これがまた効くんだ。
最初に入れておいてほしいこと。あなたの断りにくさ自体が、もう利用されてる。ここで嫌われたくないな、というその気持ち。それを計算に入れて近づいてきてるの。だから、きっぱり断ることに罪の意識なんて持たなくていい。
メッセージの段階で気づいたなら、話は早いよ。理由を長々並べる必要ゼロ。興味ありません、で終了。それ以上の返信もいらない。ブロックして構わない。相手はあなた個人に恋してたわけじゃなく、リストの一行として見てたわけで。だからこっちが消えても、向こうは痛くもかゆくもないの。気を遣ってあげる相手じゃないってこと。
ちょっと難しいのが、もともと知ってる子や、友達の友達から誘われるパターン。共通の知り合いがいると、断ったら角が立つかもって、ブレーキがかかるよね。分かる。でもさ、あなたを勧誘のリストに乗せた時点で、向こうはもう友情より数字を選んでるの。だったらこっちが遠慮してあげる筋合いもないっしょ。真正面からぶつかるのが気まずいなら、返信の間隔をじわじわ空けて、自然に離れていくフェードアウトでもいい。ブロックが一番きれいだけど、やり方はあなたがラクなほうを選んで。
会っている最中に切り出されたら。曖昧に濁すのが、いちばんまずい手。検討しますね、考えておきます、みたいな返事は、相手にとって青信号なんだよ。次の勧誘の口実に化ける。だから、その場でお金の話には乗らないと言い切る。先輩を呼ぼうとしたら、今日はもう帰りますと腰を上げる。丁寧でいいけど、優柔不断はいらない。ここ、混同しないでね。
厄介なのは、大人数の中で気づいた時。バーベキューの真ん中で、にこにこの集団に囲まれた状態でさ。ここで全員に説教してやろうなんて思わなくていいの。体調が悪くなった、この後どうしても外せない用がある、理由をひとつ立てて、さっさと会場を出る。集団の空気に飲まれる前に、物理的に距離を取るのがいちばん効くから。後からLINEで追ってきても、もう会うつもりはないと一言だけ送って、あとは既読のまま沈めていい。相手の熱量に最後まで付き合う義理なんて、どこにもないよ。
問題は、相手を好きになっちゃってた場合。分かるよぉ。久しぶりに、可愛い子が自分に好意を向けてくれた、と思ったんだもんね。手放したくないその気持ち、痛いくらい伝わる。打ち上げでこぼしたあの彼も、まさにそこで固まってた。頭では分かってるのに、心が追いつかないんだって、ずっとうつむいてた。
でもね。あなたを商材として見てる人からの好意は、恋愛じゃない。どれだけ甘い言葉を積まれても、その先で待ってるのは契約書。ここでズルズルいくと、失うのはお金だけじゃすまないの。人を信じる気持ちごと、削られてく。次に本気で誰かを好きになった時、相手を疑い続ける自分になっちゃう。それが、いちばん惜しい。だから割り切って、線を引こう。好きになった感情に嘘はなかった、それでいいの。相手が本物じゃなかった、ただそれだけの話。
しつこい場合、脅しめいたことを言われた場合。ここは我慢しないで。関係をすっぱり切って、必要なら消費者ホットラインの188番に電話していいからね。契約してしまった後でも、クーリングオフが効くケースがある。一人で抱え込まないで、公的な窓口を頼っていいんだよ。
最後に、静かな話
イベントを回してきて思うのは、ほんとにいい出会いって、もっと静かなんだよね。相手の話をちゃんと聞いて、こっちの話にもちゃんと興味を持って、時間をかけて距離が縮まっていく。初対面で褒めちぎってきたり、大人数で囲んできたり、収入の話を混ぜてきたりは、しないの。
うちのイベントから生まれたカップルも、何組かいてね。いちばん記憶に残ってるのは、最初ぜんぜん喋れなくて、隅っこでウーロン茶をすすってた男性と、話を振るのが上手な女性の組。彼女、彼の仕事の愚痴を三十分うなずきながら聞いてた。派手なアプローチなんてゼロ。半年後に二人で報告に来てくれた時の、彼のはにかんだ横顔ったら。あれが、本物の距離の縮まり方だと思う。相手の中身が知りたくて、じれったいくらいゆっくり近づいていく。それが恋でしょ。稼ぐ話から入る関係とは、スタート地点からして別物なのよね。

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