イベントの受付に立ってたとき、常連の女の子がぽつりとこぼした。「元カレ、マジで無理になってきた」って。半年前まではさ、彼の話をするたびに声が半音上がってた子なんだよね。それがどうよ。眉間にしわを寄せて、プラカップのフチをぐりぐり潰しながら、吐き捨てるみたいに言うわけ。
あんなに好きだったのに、だんだん嫌いになる。うちのサークルに来る女性から、この話は数えきれないくらい聞いてきた。
あんなに好きだった人が、なぜ生理的に無理になるのか
恋の始まりって、相手にうっすら光が差して見えるでしょ。ドキドキしてる間は、その光のせいで相手がぼやける。だらしなさも、自分本位なところも、まぶしさの中に溶けて見えなくなる。
で、別れる。光がふっと消える。
そこで何が起きるか。今まで見えてなかった素の輪郭が、いきなりくっきり浮かんでくるんだよ。この人、こんなに人の話を聞かなかったっけ。約束を平気で破る人だったな。嫌いになったんじゃない。やっと等身大で見えただけ。恋愛研究でも言われる理想化の反動に近くて、付き合ってる間、脳が都合よく美化してた像が、時間差で剥がれ落ちていく。
根が深いのは、我慢の噴出のほう。
付き合ってる最中は、嫌なことがあっても飲み込むじゃん。嫌われたくないし、関係を壊したくないから。飲み込んだ不満って、消えたわけじゃなくて、心の底に沈んでるだけなの。別れて、もう嫌われる心配がゼロになった瞬間、その沈殿物が浮いてくる。あの時わたし雑に扱われてたよね、って。安全になったからこそ、遅れて怒れるようになる。これ、すごく自然なことなんだよ。
カウンセリングの世界では、怒りは悲しみを覆う二次感情って言われたりする。本当は寂しくて胸が痛いんだけど、それを直視すると持ちこたえられないから、扱いやすい怒りに着替えさせてるの。憎んでる方が、恋しがるよりずっと呼吸が楽だからね。
うちのイベントに来てた女性で、まさにこれだった子がいる。別れて三ヶ月は平気そうにしてたのに、ある日を境に元カレへの愚痴が止まらなくなって。話してるうちに、彼女の頬がじわじわ赤くなって、声も少し震えてた。悲しみのフェーズを抜けて、怒りのフェーズに入った合図。ここまで来た子は、実はもう回復が進んでる。
それとね、嫌いの矛先が、元カレじゃなくて過去の自分に向いてる子も多い。なんであんな人を好きだったんだろう、あの時間まるっと無駄だったのかな、って。うちのある子は、別れたあとに元カレの欠点がやたらクリアに見えるようになって、それを見抜けなかった自分にいちばん腹を立ててた。わかるよ、その気持ち。でも、あの頃のあなたは、見えてる情報の中で精一杯選んだだけ。無駄な時間なんてない! むしろ、次に同じタイプを避けるためのデータを、身体で取っただけなんだよね。
それ、まだ気にしてるサインかもよ
嫌うって、実はめちゃくちゃ燃料を食う行為なの。相手を何度も思い出して、腹を立てて、また引っ張り出して怒る。そのループを回し続けるには、心のガソリンがいる。裏を返せば、まだ相手に対して心が反応してるってこと。
本当に終わった相手には、嫌悪すら湧かないんだよね。あー、そういえばそんな人いたわ、で片づく。胸もザワザワしない。腹も立たない。ただ、無風。
うちのサークルには、その無風にたどり着いた子もいる。元カレの名前が会話にぽろっと出ても、ふーんって顔で聞き流して、そのまま次の話題にいく。表情が一ミリも動かないの。あれが、本当に吹っ切れた状態。嫌いですらない、どうでもいいの領域に入ってる。
顔も見たくない元カレと、どう距離を取るか
心理はわかった。でも現実は、そう都合よく相手が消えてくれないんだよね…。連絡は来るし、SNSでは繋がってるし、共通の友達もいる。下手すりゃ職場が同じ、なんてこともある。ここからは、うちのイベントで実際にうまくいった離れ方を、状況ごとに話していく。
連絡してくる元カレがしんどいなら、まず返信の速度を落とすところから。いきなりブロックは勇気がいるって子が大半だから、既読をつけるまでの時間をじわじわ延ばしていく。即レスをやめるだけで、相手からの連絡は勝手に減っていくもの。それでもしつこいなら、通知だけ切っちゃう手もあるよ。画面が光らなければ、胸がザワつく回数そのものが減るから。
いちばん厄介なのがSNS。別れたのにフォローを外せなくて、真夜中にこっそり元カレのストーリーを覗きにいっちゃう子、ほんとに多いのよ。指が勝手に動くんだよね、あれ(泣)。やめたいなら、ブロックまでしなくてミュートで足りる。相手には気づかれず、自分のタイムラインから相手の気配だけ静かに消える。フォロー解除する度胸が出ないうちは、ミュートから入ればいいの。目に入らなくなると、驚くくらい頭から抜けていくから。
共通の友人がいると、飲みの席にふいに元カレの名前が転がり出てくる。これはもう、素直に頼っちゃうのが早い。今その話まだちょっとキツいから、また今度でいい、って一言添えるだけでいいんだよ。まともな友達なら、察してすっと話題を変えてくれる。平気なふりして愚痴の相手をし続ける義理なんて、どこにもないからね。
逃げ場がないのが、職場や学校が同じパターン。毎日、否が応でも顔を合わせる。うちに来てた子で、元カレとまさかの同じ部署って子がいてね。彼女がやったのは、割り切りの徹底だった。挨拶はふつうに。仕事の話もする。でも、それ以外の私的な会話は一切しない。感情を混ぜず、ただの同僚の一人として扱う。最初はぎこちなかったみたいだけど、三ヶ月もしたら、彼女の中で元カレが本当にただの同僚に格下げされてたって。距離って、態度のほうから作れるんだよ。
意外と後を引くのが、思い出の品と場所。もらったアクセサリー、二人で撮った写真、よく通ったカフェ。目に入るたび、記憶がぐいっと引き戻される。全部いっぺんに処分しなくていい。ただ、視界から外すのだけは早いほうがいい。捨てられないものは、箱にまとめて見えない場所へ封印。それだけで、ふとした瞬間に胸をえぐられる回数がぐっと減る。手放すのは、忘れるためじゃなくて、思い出さずにいられる時間を増やすための作業なんだよね。
心の距離は、体のほうから動かしていく
気持ちって、頭で忘れようと念じても、そう簡単には動いてくれない。むしろ念じるほど、相手のことばっかり考えちゃう。完全に逆効果。
連絡の頻度を落とす。SNSはミュート。思い出の品は箱にしまう。物理的な接点を、ひとつずつ剥がしていく。心が追いついてくるのは、そのあとでいい。相手の情報が目に入らない日々が積み重なると、気持ちは放っておいても薄まっていくものだから。
無理に感情をコントロールしようとしなくて大丈夫。嫌いなら、嫌いのままでいいよ。

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