居酒屋の半個室、斜め向かいの席で女の子がひとりの男性をいじり倒してた。「えー、その服どうしたんですかぁ?(笑)」って、肩をぽんっと叩きながら。からかわれてる本人の耳が、じわっと赤い。持ってもいないペンを探すみたいにテーブルの端を指でトントン鳴らして、目線はビールじゃなく彼女の口元にだけ吸い込まれてる。あー、これは沼だなぁ、とグラスを置いたよね。
イベントサークルでこういう場面を月に何度も至近距離で眺めてる。で、言い切っちゃう。女性が男性をからかうとき、その半分以上は好意のサインさ。ただし残りの何割かは、見抜けないと痛い目を見る種類のやつ。ここをごっちゃにしてる男の人が、本当に多いんよね。
からかうのは、距離を詰めたいから
人は、どうでもいい相手をわざわざいじらない。恋愛心理の世界だと知られた話で、軽いいじりは相手との心の距離を縮める潤滑油みたいに働く。言葉のボディタッチ、って呼んでもいいかも。
うちのサークルに半年通ってた女性がいてさ。気になる男性が来た回だけ、妙にトゲのある冗談を飛ばすんだよね。○○さんって意外とモテなさそうですよね〜、みたいな。本人いわく、普通に話しかける勇気がなくて、いじることで会話のきっかけを無理やりこじ開けてたらしい。あとで聞いてズコッとなった。あんなに刺してたのに、ビビってただけなの?って。
からかいの裏で動いてる気持ちは、ざっくりこんな感じ。かまってほしい、反応が見たい、特別な空気を二人の間にだけ作りたい。好きと言えない不器用さの、裏返し。わざと別の男性の前でいじって、嫉妬を引き出そうとする子もいた。中には、いじったときの出方で相手の器をそっと測ってる、試すタイプもいる。
ただね。全部が好意じゃない。ここ、外しちゃダメ。
いじりの動機は、ひとつじゃない
ざっくり好意と書いたけど、現場で見てると、からかう動機はもう少し枝分かれしてる。
一番かわいいのが、好きが漏れちゃうタイプ。本人は隠してるつもりで、好きな人の前だけ声が高くなって、いじりの回数が跳ね上がる。隠す気あんの?ってくらいダダ漏れ。次に、素直になれないタイプ。優しくしたい気持ちを、照れ隠しの軽口でコーティングしてくる。ありがとうの代わりに、調子に乗らないでくださいね、が飛んでくるやつ。
距離を測りたいタイプもいる。どこまで踏み込んでいいか分からなくて、いじりの返しであなたの懐の深さを確かめてるんよね。ここで余裕を見せられると、信頼の扉が一気に開く。やっかいなのが、かまってほしいだけタイプ。寂しさの埋め合わせに、手近な男性をいじって反応を集めてる。これは恋愛感情と紛らわしいから、特別扱いされてるのか、ただの暇つぶし要員なのか、冷静に切り分けたほうがいい。
好意のいじりと、見下しのいじりは別物
同じからかうでも、相手を下に見てやってるパターンがある。これを脈ありと勘違いしたときが、一番しんどい。
見分けるカギは、視線と、二人きりになったときの温度差。
好意がある女性は、いじったあと相手の反応をちゃんと見てる。ニヤニヤしながら、ちょっと上目遣いで、どう出る?って観察してるあの感じ。二人きりになると、いじりの角がふっと丸くなって、声のトーンが落ちる。距離も近い。自分にだけ向けてくる特別ないじり方なら、脈はかなり濃いと思っていい。
細かいとこだと、いじったあとのフォローが優しい。言いすぎたかな、って顔をして、ごめんごめん本気にしないでね、ってすぐ回収してくる。からかう声に、棘より砂糖が多めなんよ。あと、あなたの小さな変化に気づく。髪切りました?とか、いつもと違う時計ですね、とか。いじる前提として、ちゃんとあなたを観察してるってこと。見てないと、いじれないからね。観察と好意は、わりと地続きだったりする。
逆に、誰に対しても同じテンションでいじってる子は、それがその人の話し方のクセってだけ。あなた限定じゃないんよ。プライベートの誘いをやんわり全部かわす、いじりの奥にあなたって格下だよね、っていう湿った棘がある、二人きりだと急に塩対応になる。このへんが揃ってたら、残念ながら友達枠か、それより下。
去年、うちの常連だった男性が、ここで見事にやらかしてね。あんなにいじってくれるんだから脈ありに決まってると信じ込んで告白して、真顔で、そういうつもりじゃなかったと返された。彼、しばらくイベントに顔を出さなかったわ。報告を聞いた瞬間、胸がチクッとした。見分け方さえ知ってれば、防げた事故だったのに。
職場でからかってくる女性は、ちょっと話が違う
職場って、好意と処世術がぐちゃっと混ざる場所。だからいじりの読み解きも、街コンや飲み会より一段ややこしくなる。
うちのサークル、社会人がほとんどでさ。職場の人をどう思ってるか、お酒が入ると本音がこぼれるんよね。で、よく聞くのが、苦手な先輩ほど無難にいじって場を回してる、っていう話。角を立てないための潤滑油としてのいじりは、好意とは完全に別ライン。これを脈ありと読むと、また事故る。
職場で見るべきは、業務がからまない雑談で、わざわざあなたを選んでいじりに来るかどうか。給湯室で、すれ違いざまに、用もないのに。仕事のついでじゃなく、あなたと喋りたくて寄ってきてるなら、温度は本物。逆に、みんなの前でしかいじってこない、二人になると業務連絡しか出てこない人は、職場用のキャラを演じてるだけかも。線引きが冷たいくらいくっきりしてたら、過度な期待は引き出しにしまっておこう。
LINEのいじりにも、本音はにじむ
対面だけじゃない。からかいの矢印が向く方向は、画面の中でもけっこう正直なんよ。
脈がある子のLINEいじりは、まず返信が速い。スタンプ連打で茶化してきたり、(笑)を盛ってきたり、夜にどうでもいいツッコミがぽんと飛んでくる。会話を切りたくないから、いじってでも続きを作ろうとするわけ。既読スルーされてた話題を、向こうから蒸し返してくることもある。
逆に、対面では刺してくるのにLINEだと急に塩、っていうパターン。返信が翌日で、しかもスタンプ一個でぷつっと終わる。これ、対面のいじりは場のノリで、わざわざ時間を割いてまで絡みたい相手じゃない、っていうサインだったりするんよね。画面越しの温度差って、けっこう残酷に出るからさ。
いじられて、ここで死ぬ男が多い
脈ありだったとして。勝負はそのあとなんだよね。からかわれた瞬間の出方で、好感度はぐいっと動く。上にも、下にも。
一番もったいないのが、ムキになるやつ。は?別にモテるし、って早口で返しちゃう。図星をつかれた小学生にしか見えない。それ、追いかけてた相手に自分から逃げ道を塞がせてるようなもんさ。彼女からすると、いじった瞬間に空気が重くなるから、もう手が出せない。会話の遊び場が、ぱたんと閉じる。
次にやりがちなのが、無視と苦笑い。何も言えずにヘラヘラするパターン。安全に見えて、じわじわ効いてくる毒なんよね。リアクションが薄い人として処理されて、いじる対象から静かに外される。外された人は、その他大勢の席へスッと移されるだけ。
あと、自虐。どうせ俺なんて〜、を笑い狙いで挟む人、たまにいるけど、あれ場の温度をすうっと下げる。最初の一回は笑ってもらえても、二回目から彼女の眉が微妙に下がってるの、横で見てると分かるもん。守ってあげたい気持ちと、面倒だなって気持ちは、紙一重なんよ。
あの夜の飲み会でも、いじられた瞬間に顔を伏せて黙り込んだ男性がいてさ。場の空気がすっと薄くなって、隣の女の子の視線が、もう別の人へ流れてた。たった三秒。三秒の反応で、椅子取りゲームの椅子って消えるんよね。受けて、返す。彼女からのいじりっていうパスを、自分でコートの外へ蹴り出さないこと。それができるだけで、見える景色がまるっと変わる。
からかってくる女性の、正しい転がし方
じゃあどう動くか、刺さる返しの型を置いていくね。
まずは、余裕。いじられても焦らず、笑って受け止める。お、よく見てるね、くらいでさらっと流す。動じない男に、女性はちょっとだけ目を見開く。この人、崩れないんだ、っていう小さな発見が、好奇心に化ける瞬間がある。
そのうえで、いじり返す。やられっぱなしは舐められるだけ。同じ熱量で、でも品よく軽く打ち返す。○○さんって天然ですよね、って来たら、そっちこそ、さっきの言い間違いひどかったけど?って軽く投げる。対等な遊びになった途端、二人の間にラリーが生まれる。このラリーが続く相手を、人はなかなか手放せない。
そして、ギャップ。ふだんふざけてる人が、ふとした拍子に真顔でやさしいことを言う。重い荷物をさっと持つ。体調を気遣うひと言を、いじりの口調を一回だけ消して伝える。落差で心臓をつかむやり方さ。ずっと甘い人より、ふだん塩なのに一瞬だけ砂糖な人。効くのは、断然こっち。
最後の一手が、いじられキャラのまま終わらないための寄せ方。からかいの流れに乗っかったまま、自然に二人の時間へ持っていく。そんなにいじるなら、今度埋め合わせにコーヒーおごってよ、って笑いながら誘いをねじ込む。冗談の皮をかぶせて差し出すと、断られても傷が浅いし、相手も乗っかりやすい。うちのイベントで成立したカップル、この入り方がめちゃくちゃ多かったんよね。からかいを、ただの暇つぶしで終わらせるか、二人だけの合図に育てるか。その分かれ目は、たいてい男の側の返し方にある。
去年のクリスマス前、サークルでずっといじられ役だった男性がいてさ。彼、ある回から急に、いじられても眉ひとつ動かさず、ニコッと受けて軽くやり返すようになった。なんかありました?って本人に聞いたら、もう振り回されるの卒業したんすよね、って笑ってた。その変化に、いじってた女性のほうがソワソワし始めてね。年明けには、二人で初詣に行ったって報告が届いたわ。打ち返し方を一個変えただけで、立場ってこんなにあっさりひっくり返るんよ。
からかわれなくなったら、むしろ黄色信号
ここ、誤解してる人が多いから言っとくね。いじられて疲れた、もっと普通に優しくしてほしい、って思う気持ちはわかる。でも、急にからかわれなくなったとき、関係が前に進んでるとはかぎらない。
人は、興味が薄れた相手をいじらなくなる。気を遣う必要すらなくなって、当たり障りのない会話に切り替わるんよ。あんなにトゲトゲ絡んできた子が、ある日からやけに丁寧でよそよそしい。それ、脈が育ったんじゃなくて、フェードアウトの入り口だったりする。
え、嫌われた?って胸がざわついたら、その勘はだいたい当たってる。いじりが消えた理由が、距離が縮まりすぎたせいなのか、心が離れたせいなのか。そこは、向こうからの連絡頻度と、目が合う回数にちゃんと出てるからね。

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